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読者になる すやすや眠るみたくすらすら書けたら だらだらなのが悲しい現実。(更新目標;毎月曜) 2023-10-10 新潮社だからか…… ……リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』のkindle電子書籍が38%ポイント還元中でビビりました。 大きな額の還元セールを大規模な範囲でやる新潮社により出版された作品だからでしょうかね。 いやzzz_zzzzも、新潮さんのセール時は文庫だけでなく新潮クレストブックスだって還元セール対象となるのは知ってたんですけど、まさかそのくくりにない5000円近い本まで対象とは! (フーコーの<性の歴史>シリーズも新潮なんでセール対象になっとる) 検索かけた感じ、以前のセールでもポイント還元対象になっていたっぽいから適切な設定なんでしょうけど、デカい上に最近の本がこういう大きなセール対象になっていると「いいんだよね? 間違いじゃないんだよね?」とちょっと心配になりませんか。 (10/11追記;セール最終日だったらしく、いま再確認したらポイント付与おわってました……) *************** 『め組の大吾 救国のオレンジ』を既刊7巻まで読みました。 〔マガポケは1話だけ無料公開ですが、コミックDAYSで1~2巻収録エピソードである6話まで無料公開中。{ただでさえ同じ出版社?で配信サイト乱立して使い勝手わるいのに、足並みくらいちゃんとそろえてくれ~(乱立してるからこそ、足並みなんて揃いようがないのか……?)} kindle版も2巻無料公開中で、そちらは10/14までだから、DAYSもそのくらいで閉じられるんでしょうかね} comic-days.com 曽根氏の代表作の続編ですね。続編ですが主役たちは一新され、扱われる災害現場も一新。 たとえばソーラーパネル設置家屋での救助とか、路面にぽっかり巨大な穴をあける地盤陥没下での救助とか、現代の社会に根差したもの/当世的なもので。 そのオペレーションも、ソーラーパネル設置家屋なら…… 「漏電の可能性があるので放水消火はできない」 「だからまず配電盤を目指し、漏電の危険を解決してから、救助にのぞむ」 ……といった具合にそのシチュエーション独自のもの。非常におもしろいです。 ストーリーについては曽田節といいますか、見栄も欲も嫉妬心も恨みもあるけれど理想や根性がそれを上回り、周囲も感化されていく人間賛歌。 前作の主役たちと今作の主役たちは親戚でもない赤の他人なので、とくに前作を知らなくても読めますね。zzz_zzzzみたいに「『Change! 和歌のお嬢様、ラップはじめました。』で本格的に曽根作品を知ったよ、おもしろ~!」というひとも読めます。*1 というかむしろ、『Change!』から入ったひとのほうが『救国のオレンジ』により一層没入できたりするのではないかしら。まさかフリースタイルラップバトル漫画を連載していた(傑作!)過去がこんなかたちでつながってくるとは……。 *************** 『Armored Core Ⅵ』はとりあえず1ルートのエンディング迎えました。 チャプター1ボスについて下方修正がくわわったアップデート後でも、チャプター1をクリアできるか否かが最難関なのは変わらない模様。(そこさえクリアできる操作能力ないし根気があれば、あとは時間をかければなんとかなる) それ以後もちがった方向でリトライのかさむミッション(面)はあり、そこはヘトヘトになったんですけど、一対一で対決するようなボス戦については終盤も救済措置的強武器が(その強武器に下方修正のくわわった更なるアップデート後も)優秀なんで、意外となんとかなりました。 *** 『AC6』は、巨大建築趣味/廃墟趣味を刺激される傑作で、廃墟関連の本を買い漁りました。 一冊二冊くらいしか買えなかった昔はわからんかったですけど、取材対象もある種の定番があるんだな~と面白かったです。 {たとえばブルガリア・バズルジャにあるブルガリア旧共産党本部ホール。 こちらはトマ・ジョリオン『世界の美しい廃墟』所収<シレンシオ>の一作(2010。作家HPに作品がたぶん全部載ってるの凄いなぁ)、佐藤健寿編『世界の廃墟』(2015)、キーロン・コノリー『世界の廃墟図鑑』(2016)、ニコラス・ゲイハルター『人類遺産』(2017)……と、とりあえず4つの本・映像で登場していて、大御所感がありますね(ついでに、2016年8月公開の映画『メカニック:ワールドミッション』でもロケ地の一つとなっているらしい)} ここまできたからにはもう、<奇界遺産>シリーズも手に入れようかな。 どの舞台を取り、どう意匠を再現/アレンジし、どのような季節・天候で彩るか……というところで、各本各作の色が出るんだろうなと思うんですけど『AC6』はトマ・ジョリオン作品の静謐がお好きなかたはオススメしたい。 ぞっとするくらい寒々とした広大さ・生物の息遣いが感じられない無味乾燥とした清浄さって、これまでのシリーズ作にもあったと思うんですよ。 現行ハードのスペック/ソフトウェアの描きこみが、その清浄なまでの広大さに「(元々そうでなかったものが)こうなってしまった」経年の寂寥感であるとか、風化や退廃の崇高性であるとかを付与しております。 {しかもそこには、トマ・ジョリオン氏の写真一枚一枚がタイトル付きであるみたく、(劇中人物・コミュニティが見い出した)象徴性とか具象性とかも併せ書きされてもいる。 もちろん、理解の及ばぬ、ただただ"在る"モノこそ至高という派閥もありましょう・ でもぼくは、肉眼(プレイヤーの視点)じゃあ全容など到底うかがい知れない巨大物へ、なんらかの卑近な見立てをしてみせたりする存在がいたり、あるいは、矮小な人類が矮小であるがゆえに自らの理解のおよぶ範疇へなんとか落とし込もうとしたりって書き込み、かなり好きなんですよ} ただ、PS4以降のゲームでzzz_zzzzがおどろかされた「地形レベルで被破壊オブジェクト」はほぼ無いし、破壊可能オブジェクトの壊れかたは一辺倒で、そこはかとないミニチュア感があり。一定の天候・距離で一定の被写体を撮り続けてその「基本形」を見やる「(建造物の)タイポロジー」で有名なベッヒャー夫妻の一連の写真のような「近寄れなさ」も覚えます。 また…… natgeo.nikkeibp.co.jp ……ナショナルジオグラフィック『世界から忘れられた廃墟』は、『AC6』製作が参考にできる時分の出版じゃないですけど、面白いのでこちらもオススメ。 採用された写真・土地の情報などが充実しており、後発ゆえの強みを感じる本。 たとえばタイ・バンコクのニュー・ワールド・モールとはいかな廃墟であるか? その歴史的経緯を語った本は、すでにあるんです。{キーン・コノリー『[フォトミュージアム]世界の廃墟図鑑:産業科学・文化遺産』(2016)} 11階建ての構想が上7階ぶんにたいする建築基準法違反で閉鎖、4階までしかつくられなかったうえ、放火で屋根さえ失したモールと東南アジアの気候風土(モンスーン)とがかちあって人工池と化した……という退廃と。その意図せぬ溜め池から沸く蚊・ボウフラへの対策として、市民がコイやティラピア、ナマズを放流した……という更なる混沌とについて語った本は。 でも、屋根無しモール跡にたまった濁り池の暗色から、鮮やかな白と黄色のお魚がウジャウジャ泳いで浮き出ているようすを大写しにした写真は、コノリー氏の先行本ではうかがえなかったんですよ。 (本作のえらいところとしてもうひとつ、「あまりにすごいので、"モールの水ぜんぶ抜く/魚獲る"が行なわれ、現在は改善された」と追跡調査がされ、見世物趣味で終わらせてないところも良いです) www.amazon.co.jp ニコラス・ゲイハルター『人類遺産』も、アマゾンプライム会員特典でいま無料で観れるみたいなんで、一見の価値アリですね。 ゲイハルター監督の過去作『いのちの食べかた』『眠れぬ夜の仕事図鑑』などとおなじくさまざまな舞台を同一構図や類似シチュでつなぐシンフォニックな作品で、しかも前2作とちがってお仕事風景じゃなくて廃墟が舞台なんで一等しずかであり、前2作がタルかったかたが観ていて楽しいものではありませんけど(笑)(ぼくは好きなんで、どれもビデオ持ってますが……)、写真じゃ分からない雑味があって良いです。 ミエヴィルによるロンドン街歩きエッセイの感想を述べたさいちょっと触れたけど、ぼくにとっての廃墟って、地元の駅前の一等地にある(あった)ビルなんですよね。 もうテナントは全部抜けたもぬけの殻となっているんだけど、ヤクザが土地所有者になってしまった(らしい)ためにスクラップビルドできずに立ち往生してしまって数年だか十数年だか。ある日そのビルの内階段を興味本位でのぼってみたら、上階の床が鳥の糞などが堆積して乾いていて、踏み入れたそばから真っ白い煙を巻き上げたこと。空気のザラつきとほのかな異臭に、すぐ気持ち悪くなってしまって退散してしまったこと…… ……それがぼくにとっての廃墟なんですよ。 (たぶん東京五輪にともなうインフラ配備でもって入ったお金で、駅前開発がすすみ、その廃ビルもようやく成仏めされた) そういう雑味が、『人類遺産』にはぎっしり詰まっている。 「ホルマリン漬けの瓶詰標本が並んだ部屋」が廃墟となったときどうなるか? とか、よく考えればなるほど確かにそうなんだけど、ぼくなんかはこうして現物を映像としてお出しされてはじめて「うぉぉ……」とおののきました。 (正解;容器のわずかな隙間から保存液が蒸発して、標本が水中から顔を出したり。なにかしらの要因によって容器が割れたりして、標本がたんなる"外気に放置された死体"となり、ハエの住みかとなる) *************** それはそれとして、廃墟写真家の草分け・丸田祥三さんにかんするウィキペディア記事。 > TwitterはRTの強要や褒め称えるコメント以外の質問などは全て非表示にし、自分の気分が良くなる呟きだけを表示するという性格もある。 > > 日本語版ウィキペディア、「丸田祥三」(2023年5月9日 (火) 05:06更新の現況版) なんかこの記事自体が、オタクたちが私見を書き連ねる昔のウィキペディアっぽくて良い!(よくない) メンテのされなくなった記事あるあるだな、記事の廃墟化といった趣だな、と思ったんですけど、じつは2022年6月更新分で突如として追加されて以後そのまま残ってしまっているものみたい。最新のオタクの活きのよい令和の怨念だった……。 *** 上では丸田氏について「廃墟写真家の草分け」と書いてしまったけど(でも小澤京子さんが言ってるんだから間違いなくね?)、21世紀はいってからの廃墟歩き・都市探索(Urban exploration)ブームと、80年代廃墟ブームとのあいだには、なんか微妙な断絶を挟んでるような感がありますね。 啝『廃墟幻想』(2022)は巻頭言で、「廃墟」について…… > 日本で「廃墟」と言うと、1980年代の廃墟ブームに端を発する一部の好事家によるあまりお行儀の良くない奇特な趣味、という文脈で語られることが多いが、西洋美術史を遡れば、すでに18世紀にはいわゆる廃墟趣味が流行しており、フランスの画家ユベール・ロベールや版画家ピラネージらの作品を筆頭に、廃墟は絵画の主役の地位を確立していた。 > > エムディエヌコーポレーション刊(2022年11月1日初版)、啝『廃墟幻想』kindle版3%(位置No.165中 5) ……こうまとめるんだけど、この微妙な距離感は、いくつかの本を並べてみると確かに実際ありそうなんスよね。 錚々たる顔ぶれによる縦横無尽の廃墟論・谷川渥編『廃墟大全』(1997・トレヴィル⇒2003・中公文庫)ではもちろんピラネージが大きく扱われていたし、ユベール・ロベールも、タルコフスキー『サクリファイス』終盤とカスパー・ダーヴィト・フリードリヒ『エルデナの廃墟』を重ねた滝本誠さんが、その弟子筋ソクーロフ『静かなる一頁』とロベール『廃墟となったルーヴル宮グランド・ギャラリーの想像図』を重ねて語っている(。また谷川氏の別著『廃墟の美学』でもロベールで一項たてられていたはずだ)。 同書所収の写真評論家・飯沢耕太郎さんによる「死せる視線――写真の廃墟解剖学」では、"1 廃墟への憧れ"・"2 戦争と廃墟"・"3 デッド・テック"・"4 死とエロス"・"5 廃墟への融合"の5章をとおして19世紀から現代まで写真登場以後の廃墟趣味についてが概観されていて。ビッソン兄弟のローマ廃墟写真やヴィクトリア女王陛下の旅行写真家ベッドフォードの中東紀行廃墟写真から始まったこの論考は、南北戦争やWW2ドレスデンの廃墟や『核――半減期』(1995、東京都写真美術館)の報道団・調査団により撮られた長崎の写真などの廃墟化した戦地群をながめたあと、宮本隆司『建築の黙示録』(1988)や雑賀雄二『軍艦島 棄てられた島の風景―雑賀雄二写真集』(1988)やManfred Hamm『Dead Tech』(1983)に写された現代人工物が廃棄され朽ちて自然に帰っていくさまへの不思議な安らぎを巡り……と、人体と建造物とにみられる破壊へのオブセッション{小澤京子『都市の解剖学―建築/身体の剥離・斬首・腐爛 』(2011)にも通じる}などなどが端的なことばで語られており、この評論集においては80年代廃墟写真とロマン主義・ピクチャレスクって並べて語れるものなんですよ。 {リチャード・ミズラック氏の写真集『狂気の遺産』は、荒野の核実験場・ネバダの荒野に打ち棄てられた家畜廃棄場・射撃訓練場の的となった『プレイボーイ』誌を被写体とするが、晴天がつくる濃い明暗、板張りの小屋のなかにさす木漏れ日、なんか燃えてる荒野などなど……その荒涼や不気味・グロテスクは詩情をはらみ、序文としてスーザン・ソンタグ氏が創作SSを寄せたりしている。 原書の副題「Three Cantos」そしてこれらをくくるシリーズ名<砂漠の詩編(Desert Cantos)>の「詩篇(Canto)」についてミズラック氏は、ダンテらの詩がそう称されることからならった、と巻末インタビューで答えている。 いっぽう、 「はたして並べて語っていいものか?」 という疑問もあり、『建築の黙示録』で明暗を少なからず利きかせた写真を撮っていた宮本氏もまた、『KOBE 1995 After the Earthquake』では震災後の神戸を(ハイライトと影とが目立たない)一様に灰色の明暗状態の光源下でうつしており、新装版『Kobe 1995 : The Earthquake Revisited』の多木浩二(美術評論家・神戸出身)による序文「見えない都市」では「廃墟について今までロマン主義と結びつけて語ってきたけど、この神戸の模様はそうじゃねーわ」という比較がなされている。 『核――半減期』も、図録をじっさいに開いてみると、被爆者のケガや治療風景、検体として取り出された脳、後遺症をかかえたその後の暮らしなどが重点的にとらえられ、読んでいてツラい。「死せる視線――写真の廃墟解剖学」で取り上げられた写真も、図録の説明を読むと、原爆の直撃をうけてそうなったのでなく、そこいらの側溝が荼毘にふす火葬場としてつかわれた光景だということがわかり、非常に重たい気分になる。 屋外にそのままある遺体写真は大体そういう経緯で意図してそこへ移され(そして火葬され)たものらしく、距離の関係で爆発・火の影響が軽微だった小学校が、そうであるがゆえに荼毘に付す場として最適だった(椅子や机が豊富にあるので)……という話などを読むと、いっそう気は沈む} いっぽう(「一部の好事家によるあまりお行儀の良くない奇特な趣味」の一例といえそうなシリーズである)栗原亨編『廃墟の歩き方 探索編』(2002)をひらいてみると、ちょっと距離がある。 巻末の「廃墟関連情報」にて廃墟の出てくる映画・ドラマ・写真集が紹介されているんですけど、映画の項だと最古の作品は『ユー★ガッタ★チャンス』(1985)となり(『鮫肌男と桃尻女』も85年と記されているが、実際には99年公開らしい)、『廃墟大全』で滝本誠さんが紹介したタルコフスキー監督作、ラース・フォン・トリアー監督『エレメント・オブ・クライム』(1984)、リドリー・スコット監督『デュエリスト』(1977)、フィンチャー『セブン』などなどは総スルー。 うえは日本の廃墟にかぎった結果だから百歩ゆずるとして、「じゃあ本(写真集)の項は?」とひらいてみます。 すると、雑賀雄二『軍艦島 棄てられた島の風景―雑賀雄二写真集』が挙げられているものの「現在絶版」とだけ記され、刊行年の表記された最古の作品は柿田清英『崩れゆく記憶―端島炭鉱閉山18年目の記録』(1993)。そのほか『棄景 廃墟への旅』{1993(『廃墟の歩き方』だと一九九七となってる。1993年7月発売の目がすべった?)}の丸田祥三さん、『廃墟遊戯』(1998)の小林伸一郎さんがそれぞれ2冊ずつ本を紹介される、主役的立ち位置となっています。 本の巻頭も、小林伸一郎さんの写真が「ゲスト寄稿!」て具合にフルカラー収録で大きく扱われていましたね。 (時系列順でもなければ五十音順でもなく、とりあえず小林氏の作品が最初に並ぶ目録がちょっと面白い) <廃墟の歩き方>同様「一部の好事家によるあまりお行儀の良くない奇特な趣味」だろう中田薫(構成)&中筋純(写真)<廃墟本>シリーズも、あんまりそういう方向の話題はあんまり見られない。 本の巻頭言としてフランソワーズ・プルーストのベンヤミン論を引用するトマ・ジョリオンの本は別路線におもえて、『廃墟本4』で中筋氏と偶然出会ったさい「『廃墟チェルノブイリ』もってます」と話したりもしたそう。 『建築の黙示録』も『Dead Tech』も並べて語れる黒沢永紀さんは、栗原氏や工場萌えブームの火付け役石井哲さんの連載もある『ワンダーJAPAN』で仕事をされ……と、なんか遠いんだか遠くないんだか。 不思議な距離感だなぁと思う。 じぶんの興味に合う本に出会う/網羅するのはなかなか大変ですね。 *** 個人的には、「廃墟」「廃墟探索」のたぐいを、美的・(忘却に抗う・埋もれた過去を掘り起こす)史的・(なんらかの時代精神からくる)文化的な観点からの「よいもの・よい行為(探求・探究などで言い表されるような)」の箱へ丸っときれいにおさめることへ抵抗感があり。 ぼく自身は、下品で俗物きわまりない野次馬欲望・土足で踏みにじる(踏みにじれる)悪趣味なヨソモノ根性を絶対に持ち合わせており、ほかのひとはともかく、すくなくとも自分が前者のような態度をだけ取ることは欺瞞に思えてなりません。 (そのへんから<廃墟の歩き方><廃墟本>シリーズの「行儀の良くない」と言われるだろう態度もまた、「それはそれでひとつの行儀であって、立派でえらいのではないか」と思う) ****** そういえば武澤秀一『インド地底紀行』って、けっこう廃墟趣味/路上観察学趣味本だと思うんですけど、そこで話題にされることってあるんだろうか? 『インド地底紀行』は、現地語でヴァーヴやバーオリーなどと呼ばれる、地下水の湧き出る地底まで掘り進めた階段空間「ステップウェル」を古今東西・有名無名さまざま巡る紀行本です。(以下、むかしの記事からコピペ) > ここで特にわたしの興味を惹くのは地底のダブル・グリッド、つまり全体をダブル・ラインで均等に四分割するグリッドの図式である。今日の美意識に直接訴えかけるこのような現代的ともいえる抽象的パターンの発想がいったいどこから出てきたのだろうか。三~四世紀の人たちがきわめてシステマティックで合理的な幾何学図式をはたして先験的(ア・プリオリ)にもっていたのだろうか。それがオートマティックに適用されたとは考えにくい。ここにおける空間体験もさることながら、それ以上に、これをつくった人びとの脳の中の過程はどのようなものであったのか、そこにわたしの関心は集中する。 > > 丸善株式会社刊、武澤秀一著『インド地底紀行』p.68、「第1章 地底の光と霧――ジューナーガル」□地中のダブル・グリッドより 紹介されるステップウェルは本当にいろいろあって、荒々しく掘られ「地下というよりは、すでに十分に地の底、地球の中という感覚である」*2ナーヴガーン・クーオ(2~4世紀)や、壁が「葉脈のように、あるいは老人の腕に浮き上がった血管、はたまた病んで痩せ細った胸板に浮き出た血管のようにも見え」*3る原初の階段井戸アディー・カディー・ヴァーヴ(11or15世紀)から、「ローマのパンテオンの天空孔を想起してしまう」*4整えられたダーダー・ハリー・ヴァーヴ(15世紀)、いまでは「荒れ果てて今にも崩落し、倒壊しそうなステップウェル、根と草叢に覆われてしまったステップウェル」*5、死したステップウェルにまで及びます。 そうして紹介される死したステップウェルはいわゆる"侘び寂び"で飾れるような綺麗な死ばかりではなく、「何年か前に政府の役人たちが来てこの下にステップウェルの存在を確認したが、掘り返す資金がなくてそのままになっていると村の村長は力説する」*6だけの「ただの乾いた土の上に灌木が生い茂っているばかり」*7のものも視界におさめるところが好ましい。 *1:厳密には、『昴』は第一部は読んだ、『シャカリキ!』も分厚い文庫本を2巻くらいまで読んだ……ってかんじです。 *2:『インド地底紀行』p.62 *3:『インド地底紀行』p.63 *4:『インド地底紀行』p.74 *5:『インド地底紀行』p.93 *6:『インド地底紀行』p.97 *7:『インド地底紀行』p.96 zzz_zzzz 9日前 広告を非表示にする * もっと読む コメントを書く 2023-09-28 ■ bigcomics.jp 安田佳澄『フールナイト』7巻が出ました。収録された第63話は安田氏の𝕏でしたポスト曰く長らくつづいた章のクライマックスとのこと。手を出すのにちょうどよい頃合いなのではないかしら。 序盤のあらすじ; 厚い雲が空を覆い日の光をさえぎってから100年が経った。 夜と冬がながくなり植物もほぼ死に絶え酸素もうすくなったこの苦境にひとびとは、ヒトを文字どおりの植物人間「霊花」へと転化させる「転花」技術を発明。都市が一息つけるだけの霊花を植えることで、社会を延命させていた。 高校中退のトーシローには時間がない。生きている心地がない。工場と病院と家を往復する毎日で、金は貯まらず体は萎びる。監督が見回りで近づいてきているのに、目がかすんで手元が狂う。休まず十数時間はたらいても、出来高制のこの職場では物ができあがらなければ報酬はない。きょうの作業は罵声だけしかもらえなかった。 病院で苦境を説明するが「先週も同じこと言っただろう」と溜息だけしかもらえなかった。 最低の日々だ。だが高校中退のじぶんには選択肢がない。でもすこしずつでも金をためて学び直せたなら……。 帰宅すると、薬をきらした母が包丁を片手に待っていた。足元には学費用へそくり。「嘘をついたな。私は負けない」病んだ母から逃げる脚力さえもう枯れていた。 路地裏で倒され、馬乗りになった母からそらした顔をふと上に向ける。するとこうべを垂れる鉢植えの霊花と目が合った。 トーシローは国立転花院の門をたたいた。 「トーシロー?」 優等生だったかつての同級生ヨミコが、転花院の制服を着て立っていた……。 読んでみた感想; 作品を知ったきっかけは、作家・ライターの千葉集さんがじしんのblogで22年1月にアップした新連載紹介エントリでした。 ポスト『チェンソーマン』といった声も聴いた作品です。 きびきびテキパキ事態が進みつつも、ウダウダしているうちに時計の針が無為にグルグル回ってしまう生活の雑音・人生の雑念もまた有りすぎるくらいに有って、 「最近のうまいマンガは、細部を的確に救い上げるし、緩急がうまいよなぁ」 とほれぼれします。その筆力でえがかれるのは貧困や不条理だから、ほれぼれする以上に胃のキリキリが勝つわけですけど……。 主人公トーシローが転花手術をされて以後、物言わぬはずの霊花たちの声をなぜだか聞けるようになってしまった特徴もまた、その筆に大胆かつ広いストロークを与えてくれている印象です。 > 物語的には一巻でわりとストレートな人情ものをぶつけきたなと思ったら二巻では連続殺人捜査で、まだまだどう転がるかは断定できません。 > > hatenablog(2022年1月16日UP)、千葉集『名馬であれば馬のうち』、「2021年のマンガ新作ベスト10+5+7+5」 21年の連載開始当時、有識者はそう↑おっしゃっていたわけですが、たしかにすごい転びかた跳ねかたをしていて、たとえば別の有識者からさいきん↓聞く声は…… ……かっこいいカッティングやレイアウトで紡がれたアクションシーンに対する賞賛だったりします。 序盤を読んでピンとこなかったかたも、さらに巻を進めていけば、じぶんにしっくりくる展開がどこかであらわれるかも。 遺留捜査的人情モノ、シリアルキラー捜査モノと駆けだした今作は、余命わずかな若者が人生見直し・迷子をしてみたり、同じ捜査班内でも思想もことなりゴールもことなる別部署同士が協力したり反目したりの共同作戦がひらかれたり、家計のやりくりにこまる小市民が転花反対デモに参加する社会派スケッチが描かれたり、完全に対立する組織が腹の内を読みあうポリティカルサスペンスが繰り広げられたり……などなどと膨らんでいきます。 作品のジャンル自体がどんどん変わっていってしまうかのような速く広い展開は、『チェンソーマン』など最近のうまいマンガらしくありますが。 そちらと違うのは、『フールナイト』劇中世界の描写は「単行本のなかに世界の仕組みをすべて丸ごと盛り込んでやろう」というボトルシップ/百科全書な筆圧をおぼえるところ。 今作が目まぐるしくて広いのは、階級や立場のことなるさまざまな人の行動をザッピングする群像劇的な側面があるからですけど、群像劇にも2パターンあるじゃないですか。 ひとつは現実の複雑で広大すぎるがゆえの曖昧さ・断片性を利用した、それぞれがつながっている「ことにする」断片集。もうひとつは、あるシチュエーションに置かれた多様な者や物のふるまいをエミュレートし続ける、構想力の賜物。『フールナイト』は後者の作品という感じ。 ぼくは6巻までだと、青襟労働者の父・中学生の娘ふたり家族のサブプロットが沁みましたね。 現実のデモ・運動に冷めた目をむけるひとが少なくない日本で、体制批判者を悪魔化もせずヒーロー化もせず、100%同情できる哀れな小羊にだってせず。良い性格(家族愛)も「良い性格」(エゴ)も悪い性格(差別意識)も併せ持つ、ただただ「もうちょっと良い生活をしたい/わが子に与えたい」ふつうの人として描いた作品、というだけで『フールナイト』はあまりにも立派だ。 また『フールナイト』世界からは「オリジナルな想像力で創造しつくしてやろう」という世界設定にたいする意気込みもかんじます。 『チェンソーマン』ってすごい既存品(五十嵐『魔女』やら伊藤『潰談』、二瓶『ABARA』やら……)のすごい表現が縦横無尽に(藤本タツキ氏のすさまじい演出力でもって)引用されることで、作品に豊かな色・底知れない不気味さが出ていると思うんですけど。 その膨大な引用をいちおう成り立たせているのは、「悪魔」というある意味ナンデモアリな(枠なんて在るようで無い)枠組みによるものであって、それらがそのようなかたちで『チェンソーマン』世界というひとつの箱におさまっているロジックはうすいと思うんですよ。 対して『フールナイト』にでてくる(先行作が思い浮かぶ)参照的展開は、劇中世界の素材からしっかりはぐくまれた、一本の筋がとおった独自の展開となっているんですよね。 たとえば『フールナイト』劇中の「パレード」↑は、ほんのり今敏監督の映画『パプリカ』のパレード・シーンを想起させる異様な光景です。安田氏の𝕏をのぞいてみると映画の挿入歌「パレード」への愛を漏らしたポスト↓があって、まったく無関係とは言いがたい。 言いがたいんですけど、「これは今敏からの引用で~」みたいなウンチクを述べることよりもまず、 「先導者は一見すると榊的な神木をかかげて歩いているけど、葉々の奥に骸骨をちらつかせている。祓串には紙片を幾本にまぎれて手がなぜかあり、しかも人体としては不自然な方向を伸びている――木の枝としては自然な方向へ。 パレードは異様だ。それは厳かな儀式の異様であり、霊花とその特徴をコンサートの舞台装飾にまで昇華させた劇中都市部が目をそらした、人体が植物へ変容する霊花のグロテスクを直視させる"九相図"的異様だ」 といったことを語るべきだ。そう方針転換するほどの表現力と創造力がここにはあります。 上に挙げたさまざまな事象はどれも、根元へと辿っていけばけっきょく同じところへと――この夜と冬だらけのどこまでも広がる闇のような土壌へと行き着いてしまう。 『フールナイト』のベタ塗りの黒は、ひとつの闇鍋でごった煮した加法混色ゆえの豊かな黒なのだ、そしてこの黒をひとまとめに煮る鍋がたしかにあるのだ、ということが、巻数をかさねることで見えてきました。 ********* ことほどさようにzzz_zzzzの趣味に合う作品なんですけど、𝕏のポストを読むに、ことし29歳になる{1995年(度)生まれ}作家さんのようで、世代が近いようで微妙に遠い。「ついに小学校もカブらん若い作家さんの活躍を眺めるオッサンになったんだなおれは……」となりました。(zzz_zzzzは1989年2月生まれの1988年度の学年) 「皆信じたいものしか信じないよ」 とあるキャラが吐き捨てる6巻を読んで「おっ!?」となったんですが、「人は見たいものしか見ない」で我々にはおなじみ『虐殺器官』/伊藤計劃作品のおはなしは、安田氏はポストされていないようでした。(伊藤計劃おじさんは、いっつも伊藤計劃の話をする~) {安田氏はいぜんウェブラジオをやられていて、そこを適当に聞いた感じ、『青い脂』を半年かけて読んだ、そこから『サハリン島』も読んだ(ウェブラジオで触れた21年1月当時は1部まで読了。つづきも楽しみとのこと。『フールナイト』は20年11月~連載開始なので、既に連載中の時分のおはなし)、伊坂幸太郎(<グラスホッパー>シリーズ、『ラッシュライフ』)は読んだ、湊かなえもちょっと読んでるらしい。『マルドゥック』はマンガで読んだ。中高生時代ホラーをよく読んで、『リング』『らせん』原作が面白かった……というようなところはわかりました} ないんですけど。でも。 小学館刊(ビッグ コミックス、2023年5月3日初版第1刷)、安田佳澄『フールナイト』6巻kindle版81%(位置No201中 162)、第4~6コマ、第52話「ようやく」 たとえば、そう言うわりには花らしい花をあまり見かけない「転花」「霊花」という言い回しや。都市のどこのTVからもCMが流れるほど転花志願者はいるし霊花や霊花加工物はある一方で、その間はあまり見かけない不思議な偏りが生まれる理由など…… ……「思うに伊藤氏の世界観は、浸透と拡散したんではないか」みたいな気持ちを抱きました。 『フールナイト』を読んでいて、とくに新刊7巻を読んでいて「お~!!」となったのが、ヨミコと大ボスの対決ですよ。 転花院の職員ヨミコは7巻でとある人物と対面します。その人物は、じぶんたちが追ってきたある事件の裏で糸を引いていた人物であり、トーシローやヨミコらが名前も知らなければ会話だって交わしたことないサブプロットの父娘の運命を左右する社会的混乱の種を蒔き水を注いできた人物でもあります。 ヨミコはかれの所業を糾弾します。前言との矛盾をつく。しかしかれは折れません。逆に…… > だが信念あっての決断だ。 > > 私は自分に正義があると…愛があると信じている。 > > 蓬菜ヨミコ お前は日々信念を持って未来が明るくなると願って来院者を転花させているか? projectitoh.hatenadiary.org ……安定した公務員へと就職し「仕事だから」と自殺行為を幇助してきた――幼馴染であるトーシローが院へやってきたときの彼女の反応を、ここで思い返すと趣深い――ヨミコの人生観をゆさぶりさえする。 今作のボスの堂々たる立ちふるまいは――世界を変えようと真面目にがんばる確信犯なので厳密にはちがうんですけど(この作品のえらいところだ)――われわれの大好きな世界精神型の悪役の面構えを思い起こさせます。 このシーンに驚かされたのは、じつはそれだけじゃありません。 こうやってオタクがくどくどあげつらうほうの世界観はもちろんのこと、シーンをビジュアライズする手つきが、伊藤さんの作品やblogを読んできた当時が蘇るようなワクワクする手つきなんですよね。 小学館刊(ビッグ コミックス 2023年10月3日初版第1刷)、安田佳澄『フールナイト』7巻kindle15%(位置No.217中 34)、第55話「正義とか」 黒ブチメガネのボスは、肩も銃も地面ときれいに平行する落ち着いた構えで、汗一つかかず皴一つ刻まず正眼でヨミコを見据えます。その背景は、人工物により織りなされる整然とした幾何学模様。 対するヨミコは大粒の汗を浮かべて目を見開き、ゆがんだ姿勢で銃を構えます。 髪は乱れてその姿には影が落ちている――風源は、光源(というか影源というか。天然のネガティブ・フィル)は、彼女が乱入したさい壊されひらけた窓の外、夜の闇。 www.youtube.com 乱入したヨミコを描いたコマは20余あり、こういう対面切り返しショットの2連コマも乱入当初からあったんですけど(7巻P.19「第54話」)、ヨミコが背負うのはたいてい、無傷の他窓のブラインドが成す整然とした縞模様でした。 ヨミコが閉口するこの上下2分割の対面コマで、ようやく彼女とブラインドの醜い壊れっぷり(や風や影)をつぶさに収めた乱雑な構図が登場するんです。 projectitoh.hatenadiary.org 伊藤氏がかつて『ダークナイト』の一場面に見出した視覚的サブテクストを思い起こすような構図で、ヨミコらが対決する舞台じたいも5巻のトーシロー&ヨミコらのたとえ話を思い出すと意味深なんですけど*1、しかし『フールナイト』の背景の秩序/混沌は、もっともらしい推理ともっともらしいアクションとを積み上げてきた当然の流れのなかでふと舞い込んだ産物であり、そういう「意味」が勝ちすぎません。 {安田氏のクリストファー・ノーラン作品への言及は、金券換券ラジオの「TENETを観てきたよ雑談」がまとまってそう。 ぼく世代にとってノーラン監督はまず『ダークナイト』('08)のひとだと思うんですけど、安田氏にとっては『インターステラー』('14)のひとみたい。発表年ほぼ6年差、それぞれが19歳のときに公開された映画で、世代差ってこういうところでも出るんだと面白かった。*2} 時代はうつりかわり、浸透拡散をしていくんだなぁ、そうだといいなぁと思った7巻でした。 *** こういう話は「どこまでやってるの? お前が勝手に見出してるだけじゃない?」みたいな問題がからみますよね。 劇中で登場人物が明言しているグリーナウェイ『数に溺れて』のショットのどこかに登場する1~100の数字の意匠であるとか、"「東京」というもう一人の主人公が見守っている"をと監督がインタビューに答える今敏『東京ゴッドファーザーズ』の、シミュラクラ的に「顔」がのぞく背景美術の都市とか。スコセッシ『ディパーテッド』の"X"字の意匠の多さとか…… www.youtube.com ……あるいは(「完璧な女性の胸は完全な球形で描くべし」みたいなじしんの絵画論書に残している)アルブレヒト・デューラーによる人物画における瞳の十字ハイライトの有無であるとか(研究者が「おそらくキリスト教の信仰に篤いひとかどうかで描いたり描かなかったりしているのだろう」と推測するやつです)、 「作者からそれらしい言及があったり、なくても故意でなければここまで頻出しないだろう」 というものは了解が得られやすいですけど、今回のぼくのおはなしはさすがに弱いかな~。 安田氏がそういう脚本外のサブテクスト表現(とか環境ストーリーテリング)に凝るひとなのか、とか批評本とか読むひとなのか、とか触れたうえでこう、という話にならんとさすがにね。 {『SAVE THE CATの法則』は読んでるらしい(『金券換金ラジオ』173「TENETを観てきたよ雑談」の、『メメント』批判をする映画脚本術の本は、多分これでしょう)} ってことで予防線として、黄金比無理くり発見記事へのリンクか…… ……あるいは悪いオタクたちはもちろん、そうでないかたがたからさえ「穿ちすぎでは?」と疑問をなげられていた、ドラマ考察/評論/実況の大島育宙(無限まやかし)zyasuoki_dさんによる「『VIVANT』の撮影構図は幾何学的でうつくしい」という旨のポストを張ろうかと思ったんですけど。 後者のかたは削除されてしまっておりました。 (画面内におさまったたくさんの綺麗な丸やら、対称的な線やらへ上から選を引いて強調した4連画像。 そのたくさんの綺麗な丸は飛行機のジェットエンジンであったり、対称的な線は豪華な建物の内装であったりして、「そりゃそうだよ~!」というものでした。 zyasuoki_d氏のおはなしは、たとえば有名なキューブリックの一点透視/対称的な構図をまとめたkogonada氏によるクリップであるとか…… vimeo.com ……あるいはかつてツイッターで伊藤 弘了さんが指摘してバズった、器のふちや容量の異なるコップやグラスの内容物の水嵩がなぜか一直線にそろっている小津『東京物語』の一場面。それらのような説得力に欠けるものですね。 bunshun.jp ) ************ ynjn.jp やしきずがめんどくさい女にからまれるマンガだ! と思ったら、𝕏でふぁぼる多趣味の一つがにじさんじ{のおりコウファン、特に卯月軍団芸術家支部。seedsあたりも好きらしく、花畑チャイカちゃんのラジオ体操出演時の切り抜きポストをふぁぼったりしてる}、もう一つが『ニーディガールオーバードーズ』など病み系女子である先生による、本当に「やしきずがめんどくさい女にからまれる」マンガでした。 www.youtube.com www.youtube.com www.youtube.com www.youtube.com IT会社の長時間労働者vtuberである社築さんは、「アイドル衣装」とも称されるような所属団体の箱内統一衣装その初お披露目となるピアアリーナMM/幕張メッセ幕張メッセ国際展示場4ホール(キャパ1万人の会場)でのライブ(男性演者回)に登場する大人気ライバーのひとりなわけですから、「たしかにヒーロー役になるな~」と思いました。 *1:ヨミコが敵と銃を突きつけ合う舞台は電車のなかなのですが、5巻39話『降りちゃダメだ』では、劇中の転花・霊花で回る社会が「電車」にたとえられます。 > トーシロー > > 「…貧困街で…ひどいものをたくさん見たんだ… > > 建物から血が染み出してるような… 不幸と狂気に覆われた場所だった。 > > アキラは…あのひどい光景は…少人数を犠牲にして大勢を生かす…転花制度そのものだって… > > でも俺は…そんな大義なんてなくて ただ必死にしがみつくのに精一杯で… > > 誰かが不幸になるのをわかってても…電車から降りられないんだ。 > > ヨミコは…大義を感じる?」 > > ヨミコ > > 「私も…ずっと知らないフリして電車に乗ってた。」 > > 小学館刊(ビッグ コミックス、2023年4月20日第2刷)、安田佳澄『フールナイト』5巻34~36%(位置No.201中 > 71~74)、39話『降りちゃダメだ』 *2:ちなみに各作の評価は『TENET』は、自作のネームを読まれたとき「面白い・面白くない」以前に「わからない」と言われるのが一番ツラいけど『TENET』もそんな感じだった、『インターステラー』は最初から「わかる」し泣けて「こんなに面白かったんか!」となった。『ダンケルク』は観てるけど、『メメント』『インセプション』は観ていない……みたいな感じらしい。 zzz_zzzz 20日前 広告を非表示にする * もっと読む コメントを書く 2023-09-26 ■ www.sunday-webry.com 『レッドブルー』がおもしろい! 『週刊少年ジャンプ』の前期新連載『アスミカケル』でMMA格闘マンガ熱がたかまったから、「そういえばお隣のサンデーでもやってたよね」とググったところ、タイミングがよいことに1~2巻がkindleで9/28 23:59まで限定無料配信中でした。 そこからさらに既刊7巻まで買い、スマホアプリ版『サンデーうぇぶり』をインストールして課金し、さらに10話読んで最新エピソードまで追いつきました。 (webサイトのほうの『サンデーうぇぶり』でも、1~8話が無料公開中です) 『レッドブルー』との初接触は、TLだと数少ないサンデー読者である鷲羽巧さんのこのポストからでした。 格闘技の、というか、暴力の、「じぶんを見下すつもりなくナチュラルに見下してくる、デフォルトで高みにいてムカつくアイツをブチのめしたい。勝ってスカッとしたい」というプリミティブな衝動と欲望にたいして第1話からきちんと向き合ってて、それが根幹にある。そこが今作のえらいところだなぁと思います。 pocket.shonenmagazine.com 暴力衝動と向き合いすぎた格闘技マンガといえば、もちろん『軍鶏』がありますね。(出版年月がしばらたく経っているとはいえ、マガポケでは1~30話無料公開か。すごいことです) 「少年A」こと成嶋亮が、「キレ」てナイフで両親をメッタ刺しにした咎により、月の光もとどかない少年院の暗がりでケツを掘られリンチされる日々を送っていたところ、転機がおとずれる。体育のカリキュラムで空手の教官から正拳の握りをおそわったのだ。しかしそうして亮が握りしめるのは、さらなる凄惨と生存競争へとつづくドアノブだった……という無間地獄があちらではひろがっていたわけですけど。 『レッドブルー』は、さすがにそこまで極まった根暗なルサンチマンではないですね。 ナイフをにぎるという発想なんてもたず、握るものといえばせいぜいシャーペンかコアラのマーチ的お菓子かという小市民の少年が、自分の意志を通すひとつの手段として正拳のにぎりかたを教えられてしまったがために、大嫌いなあいつのいるMMAのリングへ踏み入れる……というおはなしです。 有名人や有名作でワード検索すると数スクロール内に1人、「モヤる」だなんだと一挙一動に粘着し注目するアンチがいるじゃないっすか? あのなかのとりわけセンスある一握りが『レッドブルー』の主人公・鈴木青葉。 青葉くんのハイライトの差さない黒い瞳をとおせば、小学校時代からの同級生で学校の人気者・「日本 総合格闘技(MMA)界を照らす太陽になってくれる」「スーパールーキー」(第1話)である赤沢拳心くんも、「電球みたいに空っぽ」(第2話)な存在として映ります。 > 「君のその底抜けな明るさが苦手だったんだ。 > > それとよく机の上 乗ってんのとか、自分ちの犬をわざわざ保護犬って説明したりとか、そういうとこ苦手なんだ。 > > だから、 > > どうしてもこの手で一発殴りたくなった」 > > 小学館(サンデーうぇぶり2022年1月12日掲載)、波切敦『レッドブルー』第1話「譲れないもの」より 1話で上のように語られて以降、拳心くんら"陽の者"と出くわすたび青葉くんらはかれらが放射する光の「ざらりざらり」とした棘を的確に具体化していきます。 その黒い瞳は、暗闇のなかでもよく利きます。 赤沢くんに吐かれたのと同じくらい的確で鋭い言葉を、青葉くんはじぶんをサンドバッグ代わりにしていた(/そのため拳心くんに〆られた)イジメっ子・岩瀬くんにも放ちます。イカニモ噛ませ犬な岩瀬くんの握り拳の掌中の暗がりに、いったいなにがあるのかを浮き彫りにする。 > 「でも僕たちって似てるよね?」 > > 「はぁ?」 > > 「岩瀬君も拳心君のこと嫌いでしょ。 > > だってボクを体育館裏に連れていくときって、クラスが拳心君の話題で盛り上がってる時がほとんどだし。 > > 岩瀬くんも格闘技してるのに拳心君だけチヤホヤされて劣等感を感じてたんだよね? だから、 > > 弱いボクをイジメて、自尊心を保ってたんでしょ。」 > > 小学館(サンデーうぇぶり2022年1月29日掲載)、波切敦『レッドブルー』第2話「大嫌い同盟」より 「おいおい待ってzzz_zzzz。 タイトルの半分を担うだろうライバルでさえ、澤村伊智原作中島哲也監督『来る。』の妻夫木聡えんじる"イクメンパパ"くらい薄っぺらい存在として如実にとらえる青葉くんの世界観に、79話もいっぺんに付き合ってらんないですけど!?」 そんな物言いは当然はいりましょう。 でもご安心、じっさい本編をひらいてみると意外とカラリと読めちゃいます。 本編でおどろかされるのは、直近に引用した岩瀬くんへの辛辣なプロファイリングが、かれを責めたり馬鹿にしたりするために放たれたものではないということです。 実はこれ、青葉くんがどれだけ岩瀬くんを好きか、自分たちが同盟をくめるほど"拳心嫌い"同志であるか。それを証明するために贈られたことばなのでした。(なぜ~? こわいよ~!) 休み時間に陰キャをボコす格闘自慢のイジメっ子、呑んだくれで入会料欲しさにモヤシっ子へ優しくするけど結局ボコしちゃうMMAバカなジムトレーナー、イケてるジム所属のスポーツマンだけど実は親の金でクラスメイトを釣ってた七光りデブだった過去をもつ高校デビュー者、ブツブツ独言をしながらジムに現れては関節技締め技をキメるだけキメて去るサラリーマン…… ……教室の隅で背中をまるめてじっとしてきたはぐれ者の青葉くんの立ち振る舞いは、清いヒーロー物語でワンパンKOされてそれきり退場となったり黒沢清映画でワンテイクにだけなぜだか混入されたりような端役たちの、端役らしい薄っぺらさを透かし見もするいっぽうで。ヒーローが正拳一発「KOしていい枠」に押し込んだり「克服すべき悪習」として見向きもしない、はぐれ者たちの薄っぺらいなりに確かにある背骨を(『来る。』もまたそうだったように)浮き彫りにだってします。 『レッドブルー』を読んでいると、 「清く正しいところも汚く悪いところもありのまま捉えることは、性善説をとなえて"傍目には悪人に見えるこのひとも、ちゃんと見れば実はいい人なのだ"などと期待するよりも、よっぽど人間が好きじゃないと出来ないことなのではないか」 なんて思えてきます。 そんな観察眼でもってのぞむMMAの世界もまたねっちょり丁寧で素晴らしい。 登場する選手は十人十色さまざまで、リング内で打投極を交し合うことは、自分たちの「意志」を示し合う対話、それどころか人生相談とみなせるような豊かな立体感を得ていきます。 一挙手一投足を意識していくうちに、選手たちはじぶんたちがいかにしてMMAに取り組んできたかを振り返り、友人関係を見つめ、家庭環境を顧み、じぶんがどうしてMMAに身を投じたのか初期衝動を思い出し、これからどうしたいのか将来の進路へと目を細めます。 第71話のワンシーンは、そんな今作の色が顕著にあらわれています。 MMA甲子園決勝の観客席の一角で、試合をおえた選手たちが寄り集まります。 > 「一緒に観ようや。」 > > (略) > > 「ああ、一緒に観よう。「鈴木君被害者の会」になっちゃうけど大丈夫?」 > > 「真剣勝負した相手 応援したらええやろ。 > > バチバチの殴り合い以外であんなヒリついた戦いは初めてちゃ。おもろい奴やん。」 > > 「面白い? 俺の読みをひっくり返して最後はあざ笑うように極められた。 > > あんな悔しい試合は初めてだよ。」 > > (青葉君に対する感情はそれぞれだな。 > > 俺は…… ……恐怖…か。) > > 波切敦『レッドブルー』第71話「決勝のリング」より 青葉くんについて、これまでの試合相手が各人まったく異なる人物像をおもいえがく……それだけ青葉くんが選手たちがひとりひとりそれぞれのやりかたで真剣に向き合ったという証拠でしょう。 はたして決勝戦ではどんな青葉くんが立ち現れるのか? そして、赤沢拳心とおなじリングで向かい合えたときは? 水曜日が楽しみで仕方ありません。 (ただ、ここまではアマチュア試合ならではの展開とかがあったり、試合一つ勝てばよいのではなく前の試合での消耗・負傷を引き継いだうえでの1Dayトーナメントならではの展開があったりして、「おお~なるほど」と思いながら読んだんですけど。 決勝戦の今のところの展開は、さすがに相手は昔からのアスリートで主人公がスポーツ初めて数ヶ月の元ボンクラである基礎体力差やトーナンメントでこなしてきた試合時間/疲労度の差が、ちょっとぼんやりして主人公補正がつよくはたらいているようにも思え、ここはちょっと惜しい。もう一波乱あってほしいなぁと待ってます) zzz_zzzz 23日前 広告を非表示にする * もっと読む コメントを書く 2023-09-20 ■ * ■ゲームのこと■ * PS5『ARMORED CORE Ⅵ』プレイ日記Chapter3-1/Dランアリーナ終了まで * ▼短期長期 両面でおもしろいストーリー * ▼難度は高いけど、おもてなし度はそれ以上に高い * ▽健やかでこまやかなステージ構成、やさしいリトライ地点 * ▽『FF16』とちがって『AC6』のリトライ時物資フル補充に敗北感はない;両作のステージ構成のちがい * ▽攻撃・被攻撃の対処と、体勢ゲージの仕様がよい * ■読みもの■ * 『住みにごり』1~4巻読書メモ * 『アスミカケル』『鵺の陰陽師』読書メモ * 『離婚しない男』読書メモ 続きを読む zzz_zzzz 29日前 広告を非表示にする * もっと読む コメントを書く 2023-09-06 ■ 『アサギロ』読み始めました、という記事です。 続きを読む zzz_zzzz 43日前 広告を非表示にする * もっと読む コメントを書く 2023-08-28 ■ okama『ヘレン・ケラー』伝記漫画を読んだ、おとぼけルポ記事のおとぼけかたに一定の指向性をみた、ウミガメのスープ(英国中世人口激減編)をだすよ、富岡次郎『イギリス農民一揆の研究』読み始めた、『街角さりげないもの事典』読み始めた……といった感じの近況報告記事です。 続きを読む zzz_zzzz 51日前 広告を非表示にする * もっと読む コメントを書く 2023-08-21 ■ オッサン化が進み、新作を完結して(≒打ち切りになって)から読む 墓参り的接触が多くなった。『死の島』参照作として『竹田くん』『ザ・バンク』が好き。『ゆらゆらQ』3巻『マロニエ』8巻読んだ。『境界のエンドフィール』1~3巻面白い、『上田文人の世界 』は俗なゲームクリエイターとしての一面が見れて良かった、といったお話をします。 続きを読む zzz_zzzz 58日前 広告を非表示にする * もっと読む コメントを書く 次のページ プロフィール zzz_zzzz だらだらなのが悲しい現実。 読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる 30 このブログについて 検索 最新記事 * 新潮社だからか…… * bigcomics.jp 安田佳澄『フー… * www.sunday-webry.com… カテゴリー * 索引 (2) 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