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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。  作者: 夕蜜柑

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防御特化と初ダメージ。

スキル修正。

「はぁ…何で勝手に死んじゃったの…もう、倒す気なんて無かったのに…」

白兎の死を嘆く楓だったが、しばらくすると立ち直ったようでレベルアップについて確認する。




「あっ!ステータスに割り振れるポイントが5増えてる!」

このポイントを振り分ければステータスの0の項目とも無事にお別れ出来る。




「うーん…でも今更防御力以外を上げてもなあ…」

一度割り振るともう元には戻せないようなので楓は慎重に考える。




「よーし…決めた!VITに振ろう!」

楓はVITに5ポイント全てを注ぎ込むとまたモンスターを見つけるため森の奥へと進んでいった。






















「うええ…気持ち悪い…」

現在、楓の足首には大ムカデが絡み付いている。流石にこれを気持ち悪いと思わない人間はいないのでは無いだろうか。

楓は腰から引き抜いた短刀でザクザクとその体を刺す。このムカデは毒を持っていて噛み付いた相手にその毒を流し込むのだが、楓の体は噛まれても傷一つつかないのだから毒の入れようが無い。

さらに白兎のような可愛さも無い。

つまり、倒しても何とも思わないのだ。

ATKが低すぎるため十数回刺してやっと倒すことが出来た。




「レベルは、上がらないか…」

楓はこの時点で引き返すか迷っていた。

しかし、奥へ奥へと進むうちにこの辺りで最も強力な魔物がいる所に迷い込んできてしまっていたのだ。

そして、その魔物は不幸なことにまさに今、楓の前に現れたのだ。

煩い羽音を立てて飛んでいる大きな蜂。

それが、楓に向かってくる。




「嘘…最悪…」

楓はその有り得ないくらい大きいお尻の針に恐怖を覚えて大盾を構える。

しかし、【AGI 0】の楓が巨大蜂の素早い動きについていける筈もなく。

一瞬で背後を取られて、首筋を刺され…







無かった。

巨大蜂も困惑しているようで何度も首筋を刺そうとする。




「あはは…くすぐったいよー」

楓は余裕を取り戻していつもの調子に戻る。

巨大蜂はそれからも何度か刺そうと試みてはいたが無意味だと悟ったのか、毒液を噴射してきたのである。




「んっ……!?」

楓は皮膚が焼けるような痛みという程では無いが確かに痛みを感じた。日焼けした後のお風呂くらいの痛みである。

ステータスをチェックするとHPが1だけ減っていた。つまり、あと三十九回毒液を受ければ楓は死んでしまう。




「………戦略的撤退!」

楓が巨大蜂に背を向けて逃げ出す。しかし非情なまでのAGI差がそれをさせてくれない。

巨大蜂が次々と毒液を吹きかける。




「くぅ………」

楓のHPが残り半分を切ったその時。




『スキル【毒耐性小】を取得しました」

その音声の後で楓は全くダメージを受けなくなった。いつもの楓ならここで喜びまくるところだったが今回は違った。巨大蜂に初めてダメージを食らわせられてちょっと怒っていたのだ。




「もうだめ…」

楓がぱたりと地面に倒れて、少しでもこの場から離れようと這いずる演技をする。

そう、演技だ。

効果があったのかは分からないものの、巨大蜂はもう少しだと言わんばかりに毒液を浴びせかける。楓が次第にその動きを緩慢にさせていくとさらに止めと言わんばかりに毒液の量を増やす。




『スキル【毒耐性小】が【毒耐性中】に進化しました】』

楓はニヤリと笑う。そう、これが狙いだったのだ。現状唯一の懸念であった毒への対策もこれでバッチリである。

そして、楓は完全に動かなくなり、死んだふりをする。巨大蜂はそんな楓を摘み上げようと顔を近付ける。




「ふふっ、かかったな!巨大蜂ぃ!」

くるりと体を仰向けにさせて手にした短刀でパッカリと開いた口元を突き刺す。装甲の無い口部分から突き込まれた刃はゴリゴリと音を立てつつ頭部を貫通した。

楓はさらにそれをグリグリと左右に動かしていく。巨大蜂の頭の上に表示されるHPゲージが着実に削れていく。

巨大蜂が怒り狂ってその針を突き立てるもダメージには繋がらない。

そしてついに巨大蜂はピクピクと震えた後、光となって消えていった。

そしてその場にぽとっと銀色の指輪がドロップした。







「ふふふ…私の勝ちだね!」




『スキル【大物喰(ジャイアントキリング)らい】を取得しました。レベルが8に上がりました』

楓は指輪を拾い上げると、今回手に入れたスキルと指輪を確認する。




フォレストクインビーの指輪【レア】

【VIT +6】

自動回復:10分で最大HPの一割回復。




「おおおお!これは凄い。HP回復!レアってことは運が良かったのかな?」

MPが初期値な上、魔法を一つも取得していない楓にとってHP回復は貴重である。さらについでに付いている【VIT
+6】が地味に大きいのだ。【絶対防御】持ちの楓にとってそれはVIT+12ということだからである。

それを最初から着けていたグローブを外して付ける。グローブは装備品では無い唯のオシャレアイテムなので指輪の上から着け直す。




「貴重なアイテムやスキルは人に言ったり見せたりしないようにメモに書いてあったもんね」

理沙がPK(プレイヤーキル)対策に書いてくれていたのだ。といっても、今の楓をPK出来るプレイヤーなどそうホイホイ現れないだろうが。




「後はスキルっと…」




【毒耐性中】

強力な毒を無効化する。

取得条件

強力な毒を四十回受けること。




「そんなに強力って感じじゃ無かったけどなあ…もしかしてVITって毒のダメージも減らしてくれてたのかな…」

実際その通りである。本来食らうダメージを軽減し抑えることが出来ていたのだ。

といっても毒という攻撃の性質上耐性無しでは1ダメージは受けてしまうのだ。




「じゃあ次!」




【大物喰(ジャイアントキリング)らい】

HP、MP以外のステータスのうち四つ以上が戦闘相手よりも低い値の時にHP、MP以外のステータスが二倍になる。

取得条件

HP、MP以外のステータスのうち、四つ以上が戦闘相手であるモンスターの半分以下のプレイヤーが、単独で対象のモンスターを討伐すること。




「私のステータスは0が四つだから…あれ?じゃあ戦闘する時は殆どの場合ずっと二倍がかかるってこと?てことは…VITは全部で四倍だ!」

楓が言った通り楓のステータスは0ばかりなので効果はVIT二倍といったところだろう。

さらにレベルが上がってまたステータスポイントが手に入っている。




「あれ?15しかステータスポイントが貰えてない……二の倍数の時しか貰えないのかな」

楓は今度は迷いなくVITに全て突っ込んだ。

【大物喰(ジャイアントキリング)らい】のことを考えても、これが最善だろう。

現在の楓のVITの実数値はなんと616である。




「んー…なんだか疲れちゃった。今日はもう終わりにしよっと。思ったよりはまっちゃった」

楓は森を抜けて町へと戻るとログアウトして現実世界へと帰って行った。

【毒耐性中】を【毒耐性小】に修正

それに伴い【毒耐性大】を【毒耐性中】に修正

巨大蜂との戦闘シーンの描写の修正。

指輪のレアリティを修正し、効果とある程度釣り合うようにしました。

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