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2022-11-18 | Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)


インボイス制度で領収書・レシートは「適格簡易請求書」として扱える!書き方や注意点を解説




インボイス制度が始まると、仕入税額控除を受けるために適格請求書(インボイス)の発行および保存が必要となります。ただし、不特定多数の者に対して販売等を行う小売業等については、適格請求書の記載要件の一部を省略した「適格簡易請求書」を交付することも認められています。

しかし、インボイス制度において、領収書がどう取り扱われるのか、そしてどのような項目を記載すべきなのか(記載を省略できるのか)、よく理解できていない方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回の記事では、領収書などを適格請求書(適格簡易請求書)として取り扱うときに必要な項目や、適切な記載方法などについて解説します。インボイス制度における領収書などの扱いについて知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修者:公認会計士・税理士 大橋 誠一

監修日:2023年2月7日
税理士試験と公認会計士第二次試験の双方に合格し、さまざまな規模や業種の企業で税務監査・財務諸表監査に従事してきた経歴を持つ。

そして税理士・公認会計士出身の民間専門家として国税審判官に任官され、法人税・所得税・相続税・消費税・加算税の審査請求事件の調査・審理に従事することにより、税務署長・国税局長による課税処分を取り消すか否かの判断を行った経験を有する。

大橋 誠一 事務所



目次:

 * 1.インボイス制度では領収書・レシートが「適格簡易請求書」として扱える
 * 2.インボイス制度導入における変更点
 * 3.「適格簡易請求書」として認められる領収書・レシートの書き方
 * 4.領収書を適格簡易請求書として扱う際の注意点2つ
 * 5.インボイス制度に適した領収書・レシートを作成しよう


1.インボイス制度では領収書・レシートが「適格簡易請求書」として扱える



インボイス制度では、特に不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業等については、適格請求書より記載を緩和した「適格簡易請求書」(簡易インボイス)の要件を満たした領収書やレシートを利用できます。まずは、適格簡易請求書とは何かを理解しましょう。インボイス制度の概要や、適格請求書との違いなどを解説します。


1そもそもインボイス制度とは?


インボイス制度とは、2023年10月に新しく始まる制度で、「適格請求書等保存方式」とも言います。現在、一部の商品・サービスに対して軽減税率が適用されていることから、適用される消費税率や消費税額などを売り手が買い手に正確に伝えるための制度です。

また、インボイス制度で仕入税額控除を受けるためには、取引先から適格請求書を交付してもらわなくてはなりません。仕入税額控除とは、生産や流通などの流れのなかで発生する消費税の二重課税を避けるための仕組みです。売上に係る消費税額から、仕入れ等に係る消費税額を控除します。

インボイス制度開始後の仕入税額控除では原則として適格請求書が必要ですが、小売業等については適格請求書の記載項の一部が省略された適格簡易請求書の役割を持たせた領収書・レシートをもって仕入税額控除を受けられます。


2「適格請求書」と「適格簡易請求書」の記載項目における違い


適格簡易請求書は、適格請求書と比べて一部の記載が不要となっています。記載が不要な項目は、「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」です。また、適格請求書には適用された税率と消費税額を記載する必要がありますが、適格簡易請求書はどちらか片方の記載で問題ありません。

なお、下記の項目については、適格請求書と同じく適格簡易請求書にも記載が必要です。

 * ●請求書を発行する事業者の氏名又は名称
 * ●登録番号
 * ●取引した日付
 * ●取引の内容
 * ●取引金額
 * ●軽減税率の対象であること(「※」などマークの記載でも可)


3領収書・レシートはスキャナ保存と電子取引(電子インボイス)保存ができる


適格簡易請求書として利用する領収書やレシートは、紙だけではなく電子データとして保存することも可能です。最近は働き方改革やペーパーレス化が推進され、さまざまな書類を電子データとして保存・管理する企業が増えてきました。

電子保存する方法は、スマホやスキャナで読み取るスキャナ保存と、電子データとしてやり取りしたものを保存する電子取引方法の2種類があります。どちらも、「電子帳簿保存法」に沿った保存・管理が必要です。

領収書やレシートを電子データでやり取りする場合、取引先にも影響が出ます。混乱を生じないよう、前もって取引先には相談もしくは確認しておくことをおすすめします。


2.インボイス制度導入における変更点



インボイス制度で、業務にいくつか変更が必要になります。そこで請求書を発行する側と受領する側で、それぞれどのような変更点があるのか詳しく解説します。インボイス制度が始まる前に、業務上の変更点についてしっかりと理解しておきましょう。


1発行側の変更点


まず、請求書を発行する事業者側の変更点です。請求書を発行する機会がある場合は、事前に準備をしておきましょう。

請求書への記載項目の追加

インボイス制度が始まると、現在使われている「区分記載請求書」の項目に加えて、下記の3項目の記載が必要となります。

 * ●適用税率
 * ●税率ごとに分けた消費税の金額
 * ●登録番号

登録番号は、課税事業者のみが登録できる番号です。なお、適格簡易請求書の場合は、適用された税率もしくは消費税の金額のどちらか片方のみが記載されていれば問題ありません。

インボイス制度に対応するため、現在使用している請求書への項目追加、もしくは新しい請求書のフォーマットを作成しましょう。

3万円未満の領収書・レシートでも発行が必要

これまでは、取引価格が3万円未満の場合、領収書・レシートが無くても仕入税額控除を受けられました。しかし、インボイス制度が始まると、たとえ3万円未満であっても適格簡易請求書の要件を満たした領収書・レシートが必要になります。

ただし、令和5年度税制改正によって、課税売上1億円以下の事業者などの対象として、2029年9月30日までに行われた税込1万円未満の課税仕入れについてのみ、適格(簡易)請求書の交付が免除されます。

仕入側(請求書を受領する側)は請求書の原本を、発行側も交付した請求書の控えの保存が必要となります。また、領収書・レシートも適格(簡易)請求書の記載項目を満たしたものでないと、仕入税額控除を受けられないので注意しましょう。


2受取側の変更点


以下では、請求書を受け取る側の変更点を解説します。細かなチェックが必要になったり保存に関する要件を遵守したりと、いくつかの変更点があります。

経費申請で確認すべき内容の増加

インボイス制度が始まると、経費申請などのために提出される請求書や領収書、レシートなどを細かくチェックする必要があります。例えば、以下のようなものです。

 * ●受領した請求書に記載要件の漏れはないか
 * ●請求書の発行者が適格請求書発行事業者として登録されているか
 * ●適格請求書に必要な項目がすべて記載されているか

もし請求書に記載漏れがあった場合、発行者に再発行を依頼する必要がありますし、相手方が登録事業者でない可能性がある場合には、国税庁の「適格簡易請求書発行事業所公表サイト」で検索して確かめる、担当者の業務が増えることになります。

電子化する際は電子帳簿保存法の要件を守る

仕入税額控除を受けるためには、適格請求書を保存しておく必要があります。もし適格請求書を電子保存する場合は、電子帳簿保存法の要件にしたがって保存しなければなりません。

> "請求書の訂正や削除について確認できることや、パソコンやモニターなど機器の説明書を保管し明瞭な状態でいつでも出力できる状態にすることなどが必要です。保存要件などの詳細は、国税庁のホームページをご覧ください。"
> 
> 引用元:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」




3.「適格簡易請求書」として認められる領収書・レシートの書き方



適格(簡易)請求書として認められるために記載が必要な項目がいくつかあります。以下で、適格(簡易)請求書の記載項目をそれぞれ解説します。記載内容の違いを把握しましょう。


1適格簡易請求書の書き方


領収書など小売業等で適用できる適格簡易請求書として扱うためには、下記の項目を満たす必要があります。フォーマットは特に決まっていないので、項目さえ記載されていれば大丈夫です。経費申請などのチェック時には、これらの項目がそろっているか確認しましょう。

記載する項目 領収書などを発行した者の氏名又は名称と登録番号
 * ●税務署から通知された登録番号を記載
 * ●登録番号は発行者名の下など、分かりやすい箇所に記載する

取引した日付
 * ●これまでと同じく、取引した年月日を記載する

取引の内容
 * ●これまでと同じく、商品名やサービス名などを記載する

取引金額
 * ●これまでと同じく、取引の金額を記載する

軽減税率の対象であること
 * ●軽減税率の対象であることが分かる※などのマークでも可

適用された税率もしくは税率ごとに分けた合計金額
 * ●適用された税率(8%または10%)もしくは税率毎に分けた合計金額のどちらかを記載する

領収書などを受領する者の氏名又は名称
 * ●不特定多数の者に対する取引の場合には、記載不要


2適格請求書の書き方


小売業等を除く業種全般に適用される適格請求書の必須項目は下記の通りです。適格簡易請求書よりも記載項目が多くなっています。

記載する項目 領収書などを発行した者の氏名又は名称と登録番号
 * ●税務署から通知される登録番号を記載
 * ●登録番号は発行者名の下など、分かりやすい箇所に記載する

取引した日付
 * ●これまでと同じく、取引した年月日を記載する

取引の内容
 * ●これまでと同じく、商品名やサービス名などを記載する

取引金額
 * ●これまでと同じく、取引の金額を記載する

軽減税率の対象であること
 * ●これまでと同じく、取引の金額を記載する

適用された税率もしくは税率ごとに分けた合計金額
 * ●軽減税率の対象であることが分かる※などのマークでも可

領収書などを受領する者の名称もしくは氏名
 * ●適格簡易請求書のと異なり、買い手(領収書を受領する者)の氏名又は名称のを記載が必要


4.領収書を適格簡易請求書として扱う際の注意点2つ



領収書などを適格簡易請求書として扱うには、いくつか注意点があります。場合によっては、適格簡易請求書として扱われないこともあるので、しっかりと頭に入れておきましょう。


1一定の要件を満たす必要がある


領収書やレシートのすべてが適格簡易請求書として扱えるわけではありません。適格簡易請求書を使って仕入税額控除を受けるには、要件を満たすことが必要です。条件は、下記の通りです。

 * ●適格請求書発行事業者(課税事業者)が発行した領収書・レシートである
 * ●適格簡易請求書を発行することが認められている事業者(適格請求書発行事業者)である
   ※認められているのは小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業、その他不特定で多数の者に資産の譲渡などを行う事業のみ

上記に記載の業種以外は、そもそも適格簡易請求書の発行ができない(適格請求書しか発行できない)ので注意しましょう。


2電子データの場合、双方の合意が必要になる


電子データとして領収書をやり取りする場合は、取引相手にも影響します。そのため、紙から電子データでのやり取りに切り替えたいときには、混乱が生じないように事前に相談し合意を得るようにしましょう。

また、取引相手だけではなく社内にも電子データでやり取りすることを周知する必要があります。社内でも問題が起こらないよう、インボイス制度が始まる前に必要に応じて研修などを行うことをおすすめします。


5.インボイス制度に適した領収書・レシートを作成しよう



インボイス制度で、領収書やレシートは「適格簡易請求書」として扱えます。ただし、必要な項目記載されていること、そして発行者が適格請求書発行事業者であることが要件です。また、すべての業者が適格簡易請求書を発行できるわけではないので注意しましょう。

近年は、働き方改革やペーパーレス化が進み、電子データで領収書をやり取りする企業が増えています。インボイス制度において、適格請求書などをペーパーレス化するときには、「おまかせ
はたラクサポート」・「コワークストレージ」や手書き書類をCSVに変換できる「AIよみと〜る」といったサービスを併せて導入することがおすすめです。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。



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